入江悠監督の作品「SR サイタマノラッパー」を見ました。
この映画は、埼玉県を舞台に、ラッパーとしての成功を夢見る若者たちの姿を描いた作品です。
SR サイタマノラッパーの公式本はこちら↓
あらすじ
ラッパーとしての成功を夢見ながら地元の片田舎で不全感いっぱいの日々を送り続ける不器用な若者たちの姿を、シニカルな中にも共感を込めて描いた切なくも温かな青春ヒップホップ・ムービー。主演は舞台で活躍する若手俳優・駒木根隆介、共演に人気AV女優のみひろ。 レコード屋もライブハウスもないサイタマ県北部のフクヤ市。地元のニート青年IKKUの夢はいつか世界的なラッパーになること。仲間のTOM、MIGHTYたちとヒップホップ・グループ“SHO-GUNG”としてライブを実現しようと奮闘中。しかし、TOMもMIGHTYもそれぞれおっぱいパブのバイトや実家のブロッコリー作りに忙しく、IKKUとの温度差は広がるばかり。そんなある日、IKKUは高校の同級生千夏と偶然再会する。東京でAVアイドルとして活躍し、地元に帰ってきたばかりの…
(Amazonより引用)
ヒップホップ・グループ“SHO-GUNG”の曲はこちら↓
総合評価:★★☆☆☆ いまいち
正直なところ、この映画には少し物足りなさを感じました。その理由を探ってみると、自分自身の感性がこの作品を十分に受け止められなかったことが大きいように思います。
映画は、埼玉県のどこにでもいそうな若者たちの姿を描いています。主人公のIKKU(駒木根隆介)をはじめとする登場人物たちは、ラッパーとしての成功を夢見ながらも、地元の片田舎で不全感いっぱいの日々を送っています。
映画の舞台となった埼玉県は、東京へのあこがれと地元への愛着が入り混じる場所。東京までそれほど遠くない地理的な特徴が、登場人物たちの葛藤をより深いものに。
東京で成功する夢を持ちながらも、なかなか行動に移せない若者たちの姿は、多くの地方の若者たちが感じているジレンマを反映していると感じました。
例えば、IKKUは情熱を持っているのに、仲間との温度差によって思うように前に進めません。小さな目標であるライブの開催さえも、様々な障害によって実現できない現実が描かれています。
評価が下がったポイントは、映画全体を通して、希望や前向きな展開が少なかった点です。
入江悠監督の演出スタイル
入江悠監督の作品を見ると、「希望」を描くというよりも、現実の「ありのまま」を表現することに重きを置いているように感じます。この傾向は、監督の他の作品「あんのこと」でも見られました。
現実をそのまま映し出す手法は、見る人に考えさせる効果がある一方で、時として平凡と感じることもあります。「SR サイタマノラッパー」も、その例外ではありませんでした。
「あんのこと」は「ありのまま」がぴったりだったのですが、「SR サイタマノラッパー」には若干あっていない印象。
この映画の、ここがシュール:福谷市民の集い
映画の中で特に印象に残ったのは、「福谷市民の集い」のシーンです。この場面は、現実社会とラップカルチャーの間にある大きなギャップを鮮やかに描き出しています。
IKKU(駒木根隆介)とTOM(水澤紳吾)は、メンバーが揃っていないことを理由に歌うことを躊躇しますが、年配の司会者に強引に促されてステージに立ちます。かなりシュールな映像になってます。
その後の質問タイムでは、観客から次のような質問が投げかけられます。
福谷市の教育委員会・シミズさん
- さっきの音楽みたいのですね、私はあんまり聞いたことがなかったのですが、なんて言うのかな、昔のディスコみたいでなつかしかったです。さっきの歌の中で「国語とか理科や社会の勉強は人生の役に他立たない」というような歌詞があったと思うんですけど、あれは本当にそう思って書いたんですか?本心で?実体験に基づいて書いた歌というか?どうでしょうか?
- 参考までに皆さんの中学校と高校を教えていただけますか?一応、教育現場の見直しに生かせればと。
福谷市の税金を見直す会代表・オオヤさん
- 難しいことよくわからないんだけど、君たち仕事とかは?音楽だけで食うのは無理でしょ?東京ならともかく、仕事は何を?
一般市民・トミタさん
- 今、珍しい音楽を聞かせていただきましてありがとうございます。ところで若者にはいろいろな問題が今出てきていまして、収入格差の問題がありますね。あなたたちはどういうことを考えて将来どう考えているのか思ったりしている。フリーターの問題というのがあって、これは数が多いものですから、きちんとした職業訓練を受けないとなかなか良い職業につけないという問題がありますね。
- お父さんやお母さんがもし万が一のことがあったら、生活の方ではどうなっちゃうのかなと心配するんですけど。
これらの質問は、ラップに対する世間の理解不足や、ギャップを如実に表していると思いました。
この場面は、ラップカルチャーが日本社会に浸透するまでにはまだ時間がかかることを示唆しているようです。
印象に残ったセリフ・シーン
映画の中で印象的だったのは、主人公IKKU(駒木根隆介)の粘り強さです。
小暮千夏(みひろ)から「宇宙人かよお前」「全然変わってねーな、高校の時のままじゃん」「つまんね」といった厳しい言葉を浴びせられても、彼はラップを続ける決意を崩しません。
この姿勢は、夢を追い続けることの難しさと大切さを教えてくれます。批判や挫折に直面しても、自分の信じる道を歩み続けるIKKUの姿には、勇気をもらえます。
こんな人におすすめ
この映画は、以下のような方々におすすめです
- ラップやヒップホップカルチャーに興味がある人
- 入江悠監督の作品ファン
- エンターテインメント性よりもリアリティを重視する人
一方で、こんな方にはおすすめできません
- ハッピーエンドが好きな人
- ラップやその文化が苦手な人
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