皆さんは「踊る大捜査線」シリーズをご存知でしょうか?
「踊る大捜査線」は、1997年に始まった日本の人気警察ドラマシリーズです。織田裕二演じる熱血刑事・青島俊作を中心に、様々な個性豊かな警察官たちが事件に挑む姿を描いています。テレビドラマや映画として長年にわたり多くのファンを魅了し続けています。
警察を舞台にしたこの人気シリーズの第4作目の映画、2005年公開の『容疑者 室井慎次』を今回はご紹介します。
柳葉敏郎演じる室井慎次が主人公の本作は、シリーズファンにとって、深い余韻を残す作品となっています。
あらすじ
2005年2月。
警視庁・室井慎次(柳葉敏郎)が、自らが指揮をとった殺人事件の捜査の責任をとらされ、逮捕される。
室井を救おうとする新米弁護士・小原(田中麗奈)。
そして、警察の不正を暴くという大義名分をかざし、徹底的に室井を追い詰める弁護士・灰島秀樹(八嶋智人)。
警察庁と警視庁の確執が絡み、事態は最悪の状況に。
室井は警察官を辞めさせられてしまうのか?
果たして真実にたどり着けるのか?
最後まで目が離せない。
総合評価:★★★★☆ かなりオススメ
「踊る大捜査線」シリーズを見てきた私にとって、本作は間違いなくオススメの一本です。
室井慎次という人物の深みを知る絶好の映画なのです。
なぜオススメなのか?5つの理由
- 変わらぬ正義の姿勢:室井の正義感は以前と変わらず、その一貫した姿勢に心を打たれます。
- 室井の人間力:警察の権力抗争に巻き込まれながらも、新城賢太郎(筧利夫)や沖田仁美(真矢みき)に助けられるのは、不器用ながらも周りの人間を魅了する室井だからこそ。
- 懐かしのキャラクター再登場:スリーアミーゴスの登場など、過去作品を知る人にとっては嬉しい要素が満載です。
- 正義の勝利:室井さんの正義が貫かれ、真犯人が見つかって名誉が回復される展開は、爽快感があります。
- 青島なしでも成立する物語:織田裕二演じる青島俊作が登場しなくても、十分に魅力的な作品に仕上がっています。
本作が面白い2つの理由
- 室井慎次という人物の魅力
- どんな状況でも正義を貫こうとする姿勢
- 視聴者を釘付けにする存在感
- 柳葉敏郎の演技力が光る
- 優秀な脇役陣
シリーズ初心者には ★★☆☆☆ いまいち
一方で、「踊る大捜査線」シリーズを初めて見る人にとっては、少し物足りなさを感じるかもしれません。
いまいちと思われる方もいるでしょう。
その理由として:
- ストーリーがシンプルで結末があっけない
- 室井慎次という人物の背景を知らないと楽しみにくい
ことが挙げられます。
初心者へのアドバイス
「踊る大捜査線」を見たことがない人は、まず映画第1作か第2作を見てから本作を見ることをおすすめします。それによって、室井慎次という人物の魅力をより深く理解できるでしょう。
第1作:踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間!
第2作:踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!
印象に残ったセリフ ※ネタばれあり
本作には、印象的なセリフがいくつかあります。その中でも特に心に残ったのが、新城賢太郎が室井に対して言った言葉です。
辞職を覚悟していた室井に対して、広島県警察本部刑事部への異動を命じるのです。
「激務ですが、おうけいただけますか?」
この言葉から、新城が室井を深く信頼していることが伝わってきます。新城にとって室井は:
- 正論を振りかざす人
- ライバル
- 目の上のたんこぶ
- 警察に必要な存在
といった、様々な側面を持つ人物です。しかし、このセリフからは、嫌な存在ではなくむしろ好意を持っている存在であることが伝わってきます。
二人の関係性の深さを感じさせる、印象的な場面でした。
心に残るシーン:警察の過ちと室井の謝罪
本作で最も印象に残ったシーンの一つが、室井が小原弁護士(田中麗奈)に謝罪する場面です。
過去にストーカー被害に遭っていた小原が、警察から「君の方が誘ったんじゃないの?」「色目使ったんだろ?」「そんな胸の開いた服着てるからじゃないの?」というような不適切な対応を受けていたことを知った室井が、警察を代表して謝罪するのです。
このシーンは、次のような重要な要素を含んでいます:
- 警察の不適切な対応の認識:被害者を責めるような警察の態度は問題。
- 室井の正義感:組織の過ちであっても、自ら謝罪する室井の姿勢が彼の正義感。
- 心の重荷:室井がこれまでの警察の過ちを背負おうとしている結果が、彼の眉間に刻み込まれているのでしょう。まさにMUROISM。
- 人間性の深み:このような出来事一つ一つが、室井という人物の複雑さと深みを形成しているのです。
たしかに警察の対応は悪かったのだけど、当事者ではない室井さんが謝罪するほど責任を感じているとなると、逆に室井さんのことが心配になってしまいました。
映画『室井慎次 敗れざる者』への伏線
本作には、後の作品『室井慎次 敗れざる者』につながる要素がいくつか含まれています。
「捜査」に対する姿勢の変化
本作での室井:
小原:捜査するんですか? 室井:私にはそれしかない
『室井慎次 敗れざる者』での室井:
家族(タカ・リク):捜査するの? 室井:もう警察官じゃない
この対比は、室井の立場や心境の変化を如実に表しています。
警察官としての使命感と、一個人としての葛藤が感じられます。
室井が結婚しなかった理由
本作で触れられる室井の過去、特に学生時代に付き合っていた人が亡くなったことは、彼が「家族を持たなかった」理由の一つだと思いました。
(大学)3年生になった春、彼女のお父さんが会いたいと言ってきた。
娘の病気は治らないのだと言われた。
冬までもたないでしょうと。
目の前がまっくらになってね、彼女なしでは生きている意味がないと思った。
お父さんに言った。
大学をやめて彼女の看病をしますと。それでも良かった。大切なものを失ってまで大学で勉強するつもりはなかった。何日かして彼女は姿を消した。
気持ちを伝えた後だった。
室井自身の言葉「彼女なしでは生きている意味がないと思った」からも、その後誰も心の中で彼女を超える人物に出会えなかったことがうかがえます。
一方で、室井慎次 敗れざる者の公式サイトには「美幌署署長時代、人妻と…」とも書いてあるので、ここにも何か理由が隠されているのかもしれません。
映画が伝えるメッセージ:正義の重要性
『容疑者 室井慎次』が観る者に強く訴えかけるのは、「正義を貫くことの大切さ」です。この映画の中で室井は、困難な状況に直面しながらも自身の信念を曲げることなく、正義を追求し続けます。
その結果として:
- 真実の発見:正義を貫いたからこそ、事件の真相にたどり着くことができました。
- 信頼の獲得:周囲の人々の信頼を得ることができました。
- 自己の誠実さの証明:自分自身に対しても誠実であり続けることができました。
この映画は、現実世界においても正義を貫くことの重要性を私たちに問いかけているとも言えます。
力を持たない私たちにとって、正義を貫くことは時に苦しいし、悲しい時もあると思いますが、一個でも正義を貫けるような心構えを持っていたいものです。
おまけ:無料で見る方法
映画『踊る大捜査線』シリーズが、地上波で放送される予定です。
もちろん、「容疑者 室井慎次」も含まれています。
詳しくは、公式サイトをご覧ください。